比叡颪

名古屋ボストン美術館が、いよいよ今秋閉館となる最終展に出かけた。

展覧会は人で一杯。曾我蕭白「琴棋書画図」(1760ごろ)は大作で、筆も闊達なのがよいが、実は自分にはさして関心はない。等伯若冲は前期で終わっていた。これはみたかった。

蕭白よりも、貞享年間(1684-1688)ごろに描かれたものだという無款(菱川派)の「江戸式風俗図巻」が面白かった。とくに始めの正月、武士の挨拶作法。門松を立てた門前で武士同士が出会って、挨拶をしている。上位の武士とその供が立っているのに対して、下位の武士が身を低くして頭を下げている。その供はしゃがんでいるが、頭も下げず、手も土につけていない。下位の武士は道に手を突いているのだが、掌ではなくて、丸めた指の背を土につけ、膝は突かず、足指の付け根で体を支えているのである。その姿勢は、今日の大相撲の力士が仕切りで蹲踞する形と似ている。

この絵巻が入館者には一番人気で、列を作って待ち、40分もかかってやっと間近に見ることができた。